忍魂の6を掴んでいっぱい出して帰った夜、部屋でトーストを齧っていると同居人がこう言った。
「PS3が四台買えるぐらい出したんだからもっといいモン喰えよ」
「ぁんだとコラ?」
こちらはハムとチーズまで載せて最高に贅沢しているつもりだったのに何だ、この言われようは?確かに帰りにラーメン屋に寄ろうかちょっと考えてしまったけど、超熟の賞味期限が迫ってる事を思い出したんだから仕方が無いじゃないか!
ふむ。
しかしよく考えてみるとこう言われるのは初めてじゃないな。初めて所かバイト先の雀荘ではいつも似たような事を言われてる。うみって食事が貧乏くさいよな、と。
「うみ、出前取るけど何か頼むか?」
バイトを始めてまだ間もない頃、先輩にメニューを渡されて驚いた。
・焼肉単品 1700円
・焼肉弁当 2500円
・上ロース弁当 2700円
etc...
(あ、あ、アホかっ!!!!)
「アホですか!」
「え?」
「なんで普通の昼飯に二千円も掛けなきゃいけないんですか!?」
「そう?おいしいよ?」
「いや、そういう事じゃなくて・・あっ」
この先輩と以前仕事明けにロイヤルホストに行ったとき、ステーキ250gとかいう2000円近くもするメニューを頼んでそして残していたのを思い出した。
「えと、その、僕はいいっす」
「ん?そう」
お客もメンバーもみんなニコニコしながら焼肉弁当を頼んでるのを見て眩暈がした。確かに2500円なんて僕らがいつも打ってる麻雀からすればものの五分で動くお金だけど、だけどだけどっ・・・
(オイが間違っとるんか?)
また別の日、今度は焼き鳥屋に出前を頼むというのでメニューを見せて貰う。
・焼き鳥弁当 1050円
・オムライス 1050円
・うな重 1580円
・焼き鳥単品 270円~
etc....
(お、意外にマトモな・・)
前回のような常軌を逸した料金設定ではない事に安堵しつつも、やはり高いなと感じてしまう僕は間違ってるのだろうか?
「この焼き鳥弁当ってのはどんな内容なんですか?」
「ん、ご飯の上に焼き鳥三本乗っかってる感じかな」
「そうですか・・
(ぎょっ!!!)
偶然目に入った先輩達の注文が書いてあるメモを見て驚いた。なんと彼らは焼き鳥弁当にプラスアルファしてさらに単品の焼き鳥を数本頼もうとしているのだ!
「前から聞きたかったんですが、なんで先輩達はみんな一食にそんなお金掛けるんですか!?何時死んでも悔いが残らないようにとか考えてるんですか?」
「え、そんなに贅沢してるつもりはないけど。普通じゃね?」
「いやいやいやいや・・」
そういえばこの人、モスで注文するとき毎回1500円分くらい頼む人だった事を思い出す。
「・・・いや、すいません。何でもないっす」
「ん?そう。じゃあうみは焼き鳥弁当でいいね?」
「はい」
やがてやってきた焼き鳥弁当。僕はそれを食べながらこれに1050円も払うのは馬鹿らしいなーと考えるのだが、先輩達はどうお考えなのだろうか。こう考える事事態が既に貧乏症という事なのだろうか?
食べる事は自由だ。食べるという事は権利だ。
だから僕には他人の食事に、食事に掛ける気持ちにケチをつける事は出来ない。
けれども、だからこそ流されずに自分の食事に関しては一貫して自分の自由を貫き通すべきだとも考える。
(流されちゃいけない。ここの風潮に流されちゃいけない)
焼き鳥弁当に本当に1050円も払う価値があるのか?答えはNOだ。これを食べるなら少し歩いて松屋の豚丼豚汁セット540円を食べた方がどんなにお得か。。出前というのを考慮しても、やはりコストパフォーマンスがそれに見合っていないのは僕にもわかる。
しかし雀荘というバイト先はその性質上、席を空けてご飯を食べに行けない事も多々あるわけで。だから出前と雀荘は切っても切れない密接な関係であり、毎回僕だけ駄々をこねて出前を頼まないというスタンドプレーに走るわけにもいかないのだ。
(どうすれば・・どうすれば)
貧乏飯のジレンマ。
この飽くなき探究心がやがて生み出したのがかの有名な「ムスタング丼」である。
あくる日、僕はとうとう焼き鳥(皮タレ)単品二本とお店の冷凍のご飯を使って作る丼が一番コストパフォーマンスに優れている事に気が付いた。550円で作れるお腹一杯味良しの優れた自信作だ!
皮の焼き鳥ジュウジュウ 冷凍ご飯チーン!フワッ
焼き鳥のタレトットットッ… 七味パ~ラパラ
ハムッ ハフハフ、ハフッ!!
僕は大変満足してそのムスタング丼を食べるのだが、
「なんか貧乏くさいね」
どうもムスタング丼は貧乏っぽいという理由で誰も真似しようとしない。それどころか
「つーか、うみってそれ食べるの似合うよな。ぷぷぷっ」
嘲笑までされる始末(´・ω・`)
女の好みとご飯に掛ける金銭感覚。この二つは僕は先輩達とは永遠にわかり合える日は来ないのだろう。どちらが正しくてどちらが間違ってるのかはわからない。いや、それ以前に正解なんて無いのかもしれない。
掛かったお金が少ない分だけ僕の方がお得に思えるのだけど、満足度でいうならどっちが上かは永遠にわかりはしないのだから。
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